曲目解説!(第7回)牧子画伯挿絵入り

ピアノ協奏曲第一番 S.124/R.455
F. リスト

1811年に生まれたリストはこのピアノ協奏曲を1849年、38歳の年に完成させた。さらに何度か推敲を重ねて現在の版になったのは1856年である。しかし、元となる主題は1830年代に着想されていたというから、20年前後を経て完成させたことになる。
リストは現在では作曲家として知られるが、前年に生まれたショパンと人気を二分したピアニストであった。父の手ほどきを受けて神童としてデビューし、練習曲で有名なツェルニーに師事したリストは、歴史的に見ても今日に至るまでの最も偉大なピアニストとも言われる。どんな曲でも初見で楽譜を読んで完璧に弾きこなしたそうだが、ショパンの練習曲だけは初見では弾けなかったそうだ。
20代以降、ピアニストとして精力的に活動し、8年に及ぶコンサートツアーでは1000回以上のコンサート(3日に1回のペース!)をこなしたリストも、ピアニストとしては37歳の時に引退し、作曲や後進の指導に専念するようになる。ショパンは生涯ピアノを含まない曲は書かなかったと言われているが、リストはピアノ曲だけでなく管弦楽曲についても交響詩という分野を切り拓くなど積極的に創作した。ちなみにリストはワーグナーの支援者であったことでも知られている。さらにリストの娘コジマはワーグナーの妻であり、本日1曲目が作曲されるきっかけとなったジークフリートは二人の息子、つまりリストの孫にあたる。
この協奏曲を完成させたのはピアニストを引退した後のことだ。ピアニストの頃にスケッチした主題をもとに1835年に初稿を完成、1849年に最終稿を完成させるものの、初演後の1856年にも推敲を加えて現在の版になった。
演奏時間は20分弱。全4楽章からなるが、第1楽章と第2楽章に少し間が空く以外は連続して演奏される。初めて聴く方は大きな1楽章のように聴こえるかも知れないので、下記に楽章の変わり目がわかるヒントを記しておいた。またこの曲は、共通のメロディが複数の楽章で使われる「循環形式」という形式で書かれている。どんなメロディがどの楽章で再現するか、そんなのを探しながら聴いてみるのも楽しいだろう。

第1楽章 Allegro maestoso
オーケストラによる力強い主題が短く提示された後、ピアノの独奏がまた力強く続いて始まる。

第2楽章 Quasi adagio
優しいタッチを使ってごく弱い音でピアノが半音階で高音部まで駆け上がったあと少し間を置いて、弱音器をつけた弦楽器の演奏で2楽章が始まる。

第3楽章 Allegretto vivace – Allegro animato
この曲ではじめてトライアングルが聞こえたら、それが3楽章の始まりの合図だ。

第4楽章 Allegro marziale animato
第1楽章の冒頭の主題の再現から高音部に到達したかと思ったら低音部での下降音形に突然移る。行進曲風の木管楽器のメロディが聞こえてきたら4楽章の始まりである。

(Vn 高橋 善朗)


人物相関図(1880年)by 牧子画伯より リストを抜粋

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