曲目解説!(第6回)牧子画伯による「まんがでわかる夏の夜の夢」付き

クラリネットとヴィオラのための二重協奏曲 Op.88
マックス・ブルッフ

ドイツ、ロマン派の作曲家ブルッフ。作曲家としては珍しく長寿で、82歳まで生きた彼の最晩年73歳の作品です。
名高い作曲家の多くは、例えばモーツァルトがオペラであり、ベートーヴェンがピアノソナタであり、チャイコフスキーがバレエ音楽であった様に、それぞれ晩年のライフワークとしてテーマを持った作品を残しています。ブルッフにとってのそれは「ギリシャ神話」であり、ギリシャ神話に於ける「愛・復讐・エゴイズム・英雄」などの人間(神々)模様を音 楽の中に表現しました。この曲も、クラリネットとヴィオラとオーケストラにそれぞれのキャラクターを持たせる事により、ロマンチシズムの中に見え隠れするエゴイズムなど、彼の求める「霊感の源泉」を表現する事に成功した最高傑作となりました。
クラリネット奏者として活躍していた息子の為に書かれ、作曲翌年に息子フェリックスとヴィリー・ヘスを独奏として、ヴェルヘルムスハーゲンにて初演されましたが、気難しい作風が当時の民衆には受け入れられず、出版されたのは彼の死後20年後でした。現在では、ブルッフの数ある協奏曲的作品の中で最もいぶし銀の様な光を放つ作品として、多くの人に愛される名曲です。

第一楽章 アンダンテ・コン・モート
ヴィオラで情熱的に開始される導入が直ちにクラリネットに引き継がれ、両者の掛け合いの後、スカンディナヴィア風の主題がクラリネットで呈示されます。

第二楽章 アレグロ・モデラート
短い序章の後、クラリネットが優美な第一主題を歌いそれをヴィオラが引き継ぎ、両者の掛け合いが始まります。一旦間を置いて可憐な第二主題がクラリネットで歌われ、転調を繰り返しながら第一主題が再現、やがて優しい表情で終息します。

第三楽章 アレグロ・モルト
トランペットで始まるフィナーレに相応しい明るく活気に満ちた序奏に続いて、力強い主題が全奏で呈示されます。その後極めて変化に富む音楽が展開され、華やかに曲を締めくくります。

(Cl 高井洋子)